仕事中や通勤中に傷病が発生した場合、会社は、その責任において労働者に対する災害補償が義務付けられています。(労働基準法第75条(療養補償)乃至第88条(補償に関する細目))
補償は、会社がその費用でなさなければなりませんが、死亡事故や後遺障害を負うような重篤な事故は、費用弁済が困難で、小規模な会社はその負担に耐えられない場合があることから、会社は予め労災保険に加入し、労働基準法で補償が義務付けられる価額の範囲内で、労働者は国から労災保険給付を受けることができます。
他方、労働基準法第1条(労働条件の原則)第2項は、「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない」と規定しています。
従って、前記した労働基準法の価額の限度で受ける労災保険給付(療養補償(治療費)、休業補償、後遺障害がある場合の障害補償、死亡した場合の遺族補償・葬祭料等)は、最低限度のものですから、言わば交通事故時における自賠責保険のような位置づけです。
後遺障害を負ったり、死亡した場合は、67歳まで働くことを前提に、健常であれば稼げたであろう得べかりし利益(逸室利益)とその状況に至った精神的被害に対する損害賠償(慰謝料)を請求することができますが、その額は、労災保険給付の額を大きく上回る額です。