労働問題、労使トラブル、労災手続、労災の位置づけ|神戸労働法律研究所

労働問題、労使トラブル、労災手続、労災の位置づけ|神戸労働法律研究所
労災の位置づけ
この項では、労災給付の位置づけを損害賠償と絡めて説明します。
説明を分かりやすくするためにここでは、自動車事故に例えてみます。 みなさんは、自動車事故の被害者になった場合はどうしますか?その場でケンカなどにならない場合、普通はケガをしていればその状態に応じて、まず救急車。そして警察を呼んで、それから保険会社へ連絡しますね。 でも、労災はどうでしょうか?会社で仕事中にケガをして労災にしますか?健康保険を使う方も多いのではないでしょうか。会社でケガをして健康保険を使うと健康保険法違反になります。(健康保険法58条) 事故後の処理は損害保険会社に任せることになりますが、加害者からは心情的にも一言「ごめんなさい。」と誤ってほしいものです。
ところが、これが仕事上のケガや今回のような外傷を伴なわない疾患だとどうでしょう。労災にしたいとは思っても、会社に損害賠償を請求したいと思う人は少ないのではないでしょうか。また、損害賠償請求したいと思っても、やはり心情的にしにくいのが現状です。
会社には従業員の安全を守るため、安全配慮義務があります。これを履行していない会社は多く、とくに大手製造業では労災隠しが横行しています。
仕事上の災害や職業病の発生について会社側に帰責事由がある場合は、被災した本人または遺族は、伝統的には会社に対して不法行為を根拠とした損害賠償請求ができます。(民法709条)
ただ、判例では雇用契約上、信義則によって会社は従業員に対して作業上の安全に配慮する義務があり、その違反によって仕事上の災害や職業病が発生した場合は、会社の雇用契約上の安全配慮義務違反を理由に債務不履行による損害賠償請求を認めています。(民法415条)
労働基準法では、会社は従業員に対して必要最低限度の災害補償を義務づけています。(労働基準法75条~88条) この労働基準法で規定されている災害補償の給付額をそっくりそのまま填補するのが労災です。 よって、労災給付がされれば会社は必要最低限度の補償をその限度(労災の給付額)において免れることになります。 言い換えれば、労災がでれば会社は少なくとも国が定めている最低限度の補償をしたことになります。
見方を変えると、従業員が仕事中にケガをすれば、その治療費や休業補償、場合によっては障害補償や遺族補償は、先にご紹介したとおり会社の義務になりますが、儲かっていない会社や倒産寸前の会社は、従業員に補償する余裕がありません。従業員がケガをしたり、死んでしまっても、勤めている会社の経営状態によって補償されたり、されなかったりという不安定さをなくすために会社に代わって国が労災という制度で最低限度の補償を肩代わりするのです。
労災は従業員を雇用しているすべての法人・個人事業(一部を除く)に適用されます。しかしながら労災は最低限度の補償であって、不幸にも後遺障害を残したり、亡くなってしまった場合はご本人やご遺族の方の生活は苦境に直面するのが大半です。そこで、会社に対する逸失利益や慰謝料を損害として賠償請求を行なうことになります。
労災で補償されない逸失利益や慰謝料を労災の上乗せ補償として会社が保険会社と契約している場合もあります。上乗せ補償を契約していれば、会社との交渉は契約していない場合に比べればまだ楽な方ですが、保険会社の上乗せ補償は労災が認定されることを条件としているものがほとんどで、脳欠陥疾患・心疾患・精神障害等によって後遺障害や死亡に至った場合は、認定されるまで何年もかかることが多く、残念ながら、現在の制度ではすべてが認定されるわけではありません。会社に対する損害賠償の請求そのものは労災に認定されるか否かという点では関係ありません(労災に認定されなくても損害賠償額を支払ってもらえる場合があります)。
このように、労災は今後の生活を続けていくために国が支給する必要最低限度の給付であり、後遺障害や死亡した場合、その方の平均余命(あと何年生きるか)に足りる補償額ではありません。よって本来、仕事をしていれば得られたはずの所得を逸失利益として、後遺障害や死亡に至った状態を慰謝料として会社に請求する損害賠償請求をするかしないかを当事者が判断することになります。

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